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解 説 |
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■判 決: 大阪地裁平成12年7月28日判決
●商 品: 株式(信用)
●業 者: 大和證券(現商号・大和証券グループ本社)
●違法要素: 断定的判断の提供、その他(不当勧誘)
●認容金額: 525万2222円
●過失相殺: 5割、7割
●掲 載 誌: セレクト16・50頁
●審級関係: 大阪高裁平成13年2月2日判決で維持、確定。事案は、建築士たる原告が妻を代理人として信用取引を行っていたところ、平成8年に、断定的判断の提供による勧誘を受けてDDI株を購入するに至り、また、DDI株が下落して損切りを行うこととなった際には、損失の穴埋めのためとして京成電鉄株、三井不動産株が勧誘され、購入に至ったが、これらも下落して損失が生じたというものである。
判決は、本件勧誘当時の取引高を根拠に、他社はDDI株を売り越していたのに対し、大和證券はDDI株の推奨販売を行っていたことを認めた上で、担当社員は「DDI株は子会社である関西セルラーの上場で値上がり確実との情報があるので是非買っておいてください。」「被告はDDIの主幹事会社なので特別の情報が入ります。関西セルラーの上場が近くあります。値上がりは間違いありません。」「絶対確実な話なんです。」などと述べて勧誘を行ったとして、かかる勧誘は当該取引に伴う危険性を的確に認識するのを妨げるような虚偽情報又は断定的な情報の提供であり、断定的判断の提供による違法勧誘に当たるとした(但し、原告の大量推奨販売による会社ぐるみの違法勧誘の主張については、認めるに足りる証拠がないとした)。
次に、判決は、京成電鉄株、三井不動産株についても、これらはDDI株の損失解消のため、オリエンタルランドの上場によりその運営会社・京成電鉄、大株主・三井不動産の値上がりが期待できるとして、担当社員の上司が、不安要因や更に損失が拡大する危険性に特に触れることなく、熟考を求めることもなく行ったもので、その勧誘文言が断定的なものとまではいえないとしても、原告の妻が損失回復のためにはこれらを購入する他ないと判断したとしてもやむをえないところがあるとした。そしてかような勧誘行為は、先行するDDI株の違法勧誘と一体的・全体的に見てなお違法の瑕疵を帯びることは否定できず、これらの株取引による損失も先行違法勧誘行為からの一連の行為に起因して生じた(拡大した)損害というべきであるとして、不法行為責任(使用者責任)を認めた。
但し、原告(原告の妻)の取引経験や取引についての積極性を理由に、DDI株については5割、他の2銘柄については7割の過失相殺が行われた。
自社が主幹事たる銘柄の推奨販売の実態が示された判決であるとともに、過失相殺は高きに失するとはいえ、先行行為を含めた一体的・全体的考察により、断定的判断まではなかった後行の勧誘行為についても違法性が肯定された点は、今後の同種事案における被害救済に大いに役立つと思われる。