[検索フォーム]
解    説

■判  決: 大阪地裁平成12年6月28日判決

●商  品: 株式(信用)
●業  者: 山一證券(破産管財人)
●違法要素: 断定的判断の提供
●認容金額: 686万0628円(元本)
●過失相殺: 3割
●掲 載 誌: セレクト16・27頁
●審級関係: 確定

 事案は、山一證券の破綻報道前日(平成9年11月21日)に、山一證券社員が一般投資家に山一株を勧誘し、信用取引にて10万株を購入させたというものである。
 原告は、山一證券の簿外債務隠蔽(証券取引法違反)等による機関の不法行為と勧誘の違法による使用者責任を選択的に主張したが、判決は、後者を認め、前者については判断を行わなかった。
 判決は、まず、貯蓄目的で安定性の高い投資を指向していた原告の属性に照らし、当時の状況からして投機性が高いものとなっていた本件山一株の取引は異質なものであったとした。そして、担当社員が山一證券から与えられた誤った情報(簿外債務はないこと)に基づく相場観により、山一株の反発を確信し、山一證券の破綻を全く予想しておらず、勧誘当日には支店内部で上司から、夕方には政府の金融支援がなされるとの情報を得ていたことを前提に、担当社員は原告に対し、「夕方には金融支援が発表され、株価は140円まで高騰してストップ高となる」「私も数日前に購入した」「今回は通常の取引とは異なる、こういうチャンスは滅多にあるものではない」といった勧誘を行ったとして、たとえ株に絶対はないことを告げたとしても、提供された情報は原告に山一株の高騰は間違いないと確信させるに十分なものであり、本件勧誘は原告の自由な投資判断の形成を妨げる断定的判断の提供に当たるとした
 但し、原告の社会的地位や当時の山一證券を巡る報道内容、勧誘時に「絶対大丈夫か」と聞いたところ「株には絶対はない」と告げられていたこと、購入後、勧誘当日中に担当社員から株価上昇の情報を得ながら決済を行わなかったことなどから、3割の過失相殺が行われた。