第21回全国証券問題研究会

声     明 


 1999年10月22日・23日の両日、証券被害の救済に取り組む全国各地の研究会・弁護団の弁護士が久留米市に集い、第21回全国証券問題研究会を開催した。
 全国証券問題研究会は、1992年2月の結成以来、ワラント・株式・投資信託等証券取引被害の救済と投資家保護のための制度改善に、一貫して取り組んできた。投資家勝訴の多数の判決と、そこに示された投資家保護の法理は、その成果であり、当研究会が編集・出版した証券取引被害判例セレクトは、既に13巻に及んでいる。また、今回の研究会では、いわば以上の活動の現段階での総括として、多数の判決から判例法理の到達点を示すものと言える代表例を選び出し、証券取引被害判例精選を編集・出版した。

 ところで、この10月1日から証券売買手数料が自由化され、日本版ビッグバンは金融サービス法を欠いたまま最終段階に入った。本来は金融規制の緩和・撤廃に先駆けてあるいは同時に整備されるべき利用者保護の制度を置き去りに、規制緩和・撤廃だけが最終段階に入っている。このことは、日本版ビッグバンが、もっぱら金融業界のために進められていることを意味している。このままでは、これまで以上の深刻な被害が引き起こされる危険性がある。

 しかし、金融審議会が本年7月に公表した「中間整理(第1次)」は、これまでの金融取引被害の実態を無視して、金融取引の効率性をさらに進めようという姿勢で貫かれている。このような考え方が不当極まりないことは、当研究会の本年8月11日の「金融審議会第一部会『中間整理 第一次』に対する意見書」で指摘したとおりである。そして金融審議会は、年内にも取り纏めるとしていた最終報告を、2000年6月に先送りするに至っている。
 こうした状況の中で、金融審議会において、金融取引に際しての説明義務の関係だけを明文化した法律案を検討する動きがあると報じられている。当研究会は、このような断片的な対応策ではなく、利用者の利益のために金融サービス法を早期に制定するよう、全力をあげるべきであると考える。さらに、今回検討されようとしている説明義務に限定した法案が、仮に前記中間整理にまとめられたような水準の場合には、前記の多数の判例が示してきた説明義務の範囲や顧客の理解といった説明義務の程度の水準を大幅に後退させる内容となるもので、到底許容できない。

 このような問題は、金融審議会がこれまでの金融取引被害の実態を把握しておらず、利用者保護について全く理解しようとする姿勢がないことが原因である。当研究会の前記意見書で指摘したとおり、早急に利用者側の意見が公正に反映されるよう方針を全面的に組み替え、速やかに一から議論し直すことを強く要望する。


平成11年10月23日久留米にて
全国証券問題研究会
代表幹事 弁護士 三木 俊博