平成12年1月14日
金融審議会 御中
                                      全国証券問題研究会
                                      代表幹事 弁護士 三木俊博
                                      幹事長   弁護士 田端 聡
                                      事務局長 弁護士 中島 弘
                                      起草委員 弁護士 櫛田寛一

 私たち全国証券問題研究会は、平成11年8月30日に、金融審議会第1部会「中間整理(第1次)」に対する意見を提出したが、今般、その「中間整理(第2次)」が公表されたので、再度、それに対する意見を提出する。

全国証券問題研究会/意見書

 中間整理(第2次)のうち、「金融商品の販売・勧誘ルールの整備について」に関しては、全ての金融商品に共通する「説明義務」を法律上に明文化し、その違反に損害賠償義務を課すとの被害救済方法(民事上の法的効果)を明定するとした点で、金融サービスの利用者保護の前進を図るものであるが、過去・現在、また将来に予想される利用者被害に鑑みると、以下の諸点において、甚だ不十分である。以下の諸点を断念・回避・先送りなどすることなく、この機会に、速やかにその立法化を図るべきである。

1、 不招請勧誘の禁止を採用し、その違反にはクーリングオフを可能とすべきである。

 なお、具体的立法化に際しては、一般的広告と区別するため、対象行為を、攻撃性の強い電話勧誘と戸別訪問等に限定することが考えられる。

2、 適合性の原則を明文化し、その違反には損害賠償義務を課すべきである。

 適合性の原則は、金融商品の販売・勧誘における基本原則というべきものであって、証券取引法で明文化されているばかりか、裁判例でもその旨を強調するものが多い。その実行性確保には、その違反に損害賠償義務を課すことが不可欠である。

3、  詐欺的な勧誘についても、その禁止規定を明文化すべきである。

 この点、中間整理(第2次)は、「消費者契約法がそのまま適用されることが適当である」としている。そのことは適切であるが、同法の制定を待機するのではなく、また、同法の内容と制定が確定していない現状においては、金融サービス法においても、積極的に詐欺禁止規定を明文化するべきである。

4、 説明義務については、その内容と方法等を充実すべきである。

(1)説明の内容
  中間整理(第2次)は、説明義務の対象事項は「顧客のリスク判断にとって重要な事項」である、この場合のリスクとは「将来、不利益な状態が生じる可能性」であるとした上、「重要事項」の説明内容として、「商品の基本的な性格」、仕組みにリスクが内在する時は「そのリスクをもたらす主要な要因」を挙げている。この点はそのとおりであるが、さらに加えて、そのリスクの「範囲(あるいは程度)」をも説明内容とすべきである。

(2)説明の程度・方法
  中間整理(第2次)は、説明の程度については何ら言及していないが、この点も重要である。説明義務の意義が、利用者の自主的で正確な判断を確保することにあることに照らせば、利用者が当該金融商品を十分に理解するに足る程度に説明が尽くされる必要がある。その旨を明記すべきである。また、説明の方法について、中間整理(第2次)は、業界団体のガイドライン、個社の社内規定に規定することが望ましい、とするのみである。しかし、宅建業法35条「重要事項の説明」のように、書面を以って説明することを明文化するべきである。とりわけ、リスクが内在している金融商品の場合、事を明確にし、利用者の十分な理解を得るために、過不足のない書面による説明が不可欠である。

(3)みなし規定の採用
  重要事項の説明を書面を以って行なうことを義務付けることと関連して、説明書面を交付しなかったり、不備ある書面を交付した場合には、説明義務を履行しなかったものとみなすとの規定を置くべきである。(なお、説明義務の性質に鑑みれば、逆に、形式的に説明書面を交付しただけでは、説明義務を履行した(尽くした)とは言えないことに留意を要する。)

5、 融資業者の(共同)責任をも明文化すべきである。

 この点に関しては、「論点整理」において言及されているものの、中間整理(第2次)本文では何ら言及されていない。しかし、変額保険や投資信託とそれらの購入資金融資が一体となった販売・勧誘等による被害とその救済に関与した私たちの経験に照らすと、融資業者がその法的資格がないのに、事実上、金融商品の販売・勧誘を行なった場合、融資業者(融資)と販売業者(金融商品)が一体となって販売・勧誘を行なった場合に、融資業者も法的責任を負うこと、後者では販売業者と共同して責任を負うことを明文化することが不可欠である。

                                                       以  上