第27回全国証券問題研究会

声        明



 2002年11月22日・23日の両日、証券被害の救済に取り組む全国各地の研究会・弁護団の弁護士が大阪に集い、第27回全国証券問題研究会を開催した。
 当研究会は、1992年2月の結成以来、証券取引被害の救済と投資家保護のための制度改善に、一貫して取り組んできた。投資家勝訴の多数の判決と、そこに示された投資家保護の法理は、その成果であり、当研究会が編集・出版した証券取引被害判例セレクトは、20巻に達することとなった。

 今回の研究会では、これまでに取り扱ってきた重要な論点についてその現在の到達点を検証し、さらなる深化と発展を目指すべく、証券訴訟の入口とも言うべき論点である適合性原則について、様々な角度からの研究と議論を行った。その結果、適合性原則が投資家保護の基本原則として確実に定着しつつあることが確認できた反面、適切な理解を欠いた裁判例も数多く、同原則は今なお十分に機能しているとまでは言い難いことが判明するに至った。我々は、新種の投資商品が次々に開発され、一般投資家に販売されている今日においては、適合性原則が投資家保護と公正な市場の確立に一層重要となると確信する。とりわけ、事前規制から事後規制に比重を移す、いわゆる金融システム改革の流れの中で、事後規制の担い手である裁判所の正しい認識・理解を得て、あるべき判例法理を形成するべく、より一層の取組を続けていく所存である。
 
 ところで、当研究会は、これまでにも繰り返し、弁護士費用の敗訴者負担制度に反対する意見を表明し、仲裁法制定に関しても証券取引被害に仲裁契約を持ち込むことに反対する意見を表明してきた。この点、上記の適合性原則を巡る実情を考えても、やはり我が国の証券取引被害に関する救済法理は発展途上にあると言わざるを得ず、投資家は、敗訴のリスクをも負担しながら、現状における唯一無二の被害救済手段である訴訟による被害回復を図るしかない。そして、かような訴訟による裁判例の蓄積があってこそ、次第に適合性原則が被害救済のための判例法理として定着するに至っていることもまた、偽らざる事実である。投資家被害事案を司法の場で解決し、投資家保護の法理を発展させていくことは、より一層重要性を増している。このようなことからしても、投資家の訴訟提起の道を閉ざす結果を招く弁護士費用の敗訴者負担制度や安易な仲裁法制定は、明らかに投資家保護に逆行し、被害救済法理の発展を阻害するものであると言える。我々は、引き続き強く反対の意思を表明するものである。

 また、平成12年に成立した金融商品販売法においては、説明義務の内容が不十分であることに加えて、適合性の原則の遵守が単なる勧誘方針の策定とされるにとどまり、法的義務とはされなかった。この点、同法は投資家保護の観点から極めて不十分である。したがって、上記の通り適合性原則の重要性が一層増大していることに鑑みれば、早急に金融商品販売法を改正し、少なくとも、顧客調査義務、適合性原則遵守義務、及び同原則違反の場合の損害賠償責任を明文化するべきである。

                              2002年11月23日大阪にて
                              全国証券問題研究会
                              代表幹事 弁護士  櫛 田 寛 一