2000年11月2日・3日の両日、証券被害の救済に取り組む全国各地の研究会・弁護団の弁護士が新潟に集い、第23回全国証券問題研究会を開催した。 金融サービス法を置き去りにして本年5月に制定された「金融商品の販売等に関する法律」は、来年4月1日からの施行を控え、現在金融商品販売業者によるいわゆる勧誘方針(コンプライアンス)作りが行われているものと思われる。しかしながらコンプライアンスに関するこれまでの議論、そしていまだ絶えない証券取引被害事例に見られるような証券会社その他金融商品販売業者の体質を考えるとき、真に投資家保護となりうる勧誘方針の策定については悲観的にならざるを得ない。 昨年11月に東証マザーズが開設され、本年5月にはナスダック・ジャパン市場が創設された。また海外の証券取引所との提携やさらには合併構想、24時間市場構想など、証券取引市場を巡る状況は大きく変化してきており、今後もさらに変化することが予測される。 本年6月27日、金融審議会は答申を発表し、ADR(裁判外紛争処理機関)の制度の整備を提言した。しかし答申の内容はほとんどの問題を先送りしているとされ、その後この問題を巡る議論は進展していない。従来、すでに存在する裁判外紛争処理制度が全くといって機能しなかった実状を考えるとき、単に制度をいじることのみによってADRが実効的に機能するようになるとは考えにくい。むしろADRが訴訟手続に前置されることを条件とされるなど、権利救済への道が却って遠くなるような制度改悪がなされないよう、この問題に関する議論を監視し、提言をしていく必要がある。 証券取引その他金融商品取引を巡る環境は、規制緩和の波を受けて大きく変化してきており、この変化は今後も続くであろうが、それがどこへ向かっているのかは依然として見極めがつかない状況である。しかし「事前規制から事後規制へ」の動きの中、司法のチェック機能は今までに増して重要となり、裁判所の役割はいっそう増大するであろう。ところが、「金融サービス法」の制定は先送りとなり、未だそのめどすら立たず、逆に投資家保護を後退させたとの評価さえある消費者保護法、金融商品販売法の制定に象徴されるように、投資家保護の後退の懸念が高まっている。新たな金融商品が個人投資家に対し販売され、すでに新たな被害が発生しているが、これに対する裁判所の反応は残念ながら鈍い。さらに民事訴訟における弁護士費用の敗訴者負担制度の導入、株主代表訴訟における出訴要件の制限導入の動きなど、司法によるチェック機能が制度的にマヒさせられつつあることに我々は危機感を抱いている。 2000年11月3日 新潟市にて 全国証券問題研究会 |