第24回全国証券問題研究会

声     明 

(金融商品販売のコンプライアンスについて)


 本年4月1日、金融商品販売業者は自社の金融商品販売の「勧誘方針」を作成・公表した。これは同日から施行された金融商品販売法に基づくものである。これに先立ち全国証券問題研究会は金融商品販売法についての研究を行い、金融商品販売業者の勧誘方針作成の基準として証券取引被害を救済した裁判例に基づく「あるべき勧誘方針」を提言し公表していた。
 そこで、今回我々は公表された各社勧誘方針を収集し、提言との比較検討を行った。
 その結果、今回公表された金融商品販売業社各社の勧誘方針は極めて抽象的・曖昧で顧客保護には極めて不十分であって、新法の意図に反するものであると言わざるを得ない。新法は各社の作成・公表した勧誘方針がコンプライアンスとして働き、顧客の業者選択の指標となり、顧客保護により配慮した業者が顧客を獲得し業績を伸ばして行くことで顧客保護が実現されるという市場原理を期待した立法であった。
 これに対し、各社の勧誘方針は類似した抽象的文章に終始しており、各社横並びで新法の意図に真っ向から反し極めて非競争的談合的である。また法律は守る、悪いことはしないというような当たり前の内容を掲げるのみで、我々が判例に基づき提言した顧客保護のための勧誘ルールを具現していない。
 例えば適合性原則についてほとんどが「適合した商品をお勧めするよう努めます」とするのみで、提言にあるように「最も適合する商品を選択し、不適合商品は販売しない」とまで規定した業者はなかった。
 勧誘方法・時間帯については提言のように不招請勧誘を規定したところはなく、ほとんどが「不都合な時間帯、迷惑な場所での勧誘は致しません」と当たり前の規定をするのみであった。
 抽象的文言に終始した理由は詳細に定めて損害賠償の根拠にされることを避けたとの批判も出されており、もしそれが真実ならば自社で定めた顧客保護ルールも社員に守らせる自信はないということの自白であり、我々が提言したルールに違反する勧誘が取引界に横行していることの証左である。
 特に、証券会社の勧誘方針は生命保険会社、信託銀行、普通銀行に比較し、よりリスクの高い金融商品を販売する金融商品販売業者であるはずの証券会社の勧誘方針であるに拘わらず、その作成公表したは勧誘方針は当たり障りのない抽象的文言に終始しており、他の業界の勧誘方針の方が顧客保護の見地からより詳細具体的な規定となっている。
 今回の本研究会でも数多くの証券取引被害救済判例が報告され、違法な取引勧誘が跡を絶たない事実が明らかになっている。
 従ってより詳細な勧誘方針の作成とその遵守が急務である。
そこで証券各社はじめ各金融商品販売業者は当研究会が昨年提言公表したあるべき勧誘方針に合致するよう自社の勧誘方針を至急改訂すべきである。よって声明する。

                                 2001年6月2日 京都市大会にて

                                 全国証券問題研究会

                                 代表幹事 弁護士 田中清治