信用リスクを取り巻く環境

                                               東海大学教養学部
                                                    新保 恵志
1.社債の信用リスク
(1)信用リスクと格付け
 格付け:信用力を記号で表したもの。ただし、絶対的なものではない。
 AAA〜BBB:Investment Grede(投資適格級)
 BB以下   :Speculative Grede(投機級)

(2)社債のデフォルトとその後の対応
 かっては,社債がデフォルトを起こした場合は,受託銀行が投資家保護の観点から社債を買い取り。
 しかし,現在では,デフォルトを起こした場合は投資家が全額損失を被る形。

(3)適債基準の撤廃と投資家保護の観点
・適債基準:
 社債を発行する際,一定以上の格付けならびに入口基準を満たしていないと,社債を発行できない制度。撤廃以前は,普通社債A格以上,転換社債はBBB格以上(無担保債の場合)
・撤廃の理由:
 金融自由化の一環。中小企業等への起債の道を開く。因みに,米国には日本のような適債基準はない。投資家の自己責任原則。
・問題点:
 企業のディスクロージャーが不完全。格付けのない社債の安全性をどのように判断するか。ディスクロージャーと自己責任原則は表裏一体ということの認識が不足している。


2.投資信託
(1)投資信託のリスク                    
・RRl〜RR5:リスクの度合いに応じてローリスク・ローリターンをRR1,最もハイリスク・ハイリターンのものがRR5。
 ただし,リスクの度合いの基準は各社によってマチマチ。

(2)投資信託のディスクロージャー
・ファンドの性格(安定的な運用か投機的な運用か)や運用方針などについての情報は開示されているが,具体的な個別の金融商品までの開示はない。
・そのため,きわめてリスクの高い金融商品への投資が投資家に知られることなく行われる可能性は否定できない。
・たとえば,機関投資家が買い取らないような売れ残ったユーロ円債やワラント、中小企業発行の私募債など。