ファイナンシャル・プランナーについて

                                  2000年4月15日 弁護士 武井共夫

第1 ファイナンシャルプランアートは?

1 ファイナンシャル・プランナー(FP)の定義
@ 顧客の収入や資産、負債などに関するあらゆるデータを集め、
A 顧客の目標や希望を把握し、
B 必要に応じて、他の専門家の協力を得ながら
C 貯蓄計画、保険、投資対策、税金対策、相続などの包括的なライフプランを立案し、
D それを実行援助する専門家

2 その必要性
@ 保有資産・投資資産の種類の多様化・量的増大・運用の仕組みの複雑化等に伴う資金運用・活用ニーズの多様化
A ライフサイクルに合った資金設計の必要性と高齢化社会の進展

3 ライフプランニングとは ?
(1)種類
@ 住宅資金設計
A 教育資金設計
B リスク・マネジメント
C 金融資産運用設計
D 不動産運用設計
(2)ライフステージと資金需要
@ 就職・新婚時期〜結婚資金耐久消費財購入資金
A 家庭形成期〜住宅取得資金
B 家庭充実期〜教育資金
C 家庭成熟期〜老後資金
D リタイア期〜老後資金の運用
(3)ライフプランニングの手順
@ 目標の明確化とその数値化
A 情報の収集
B 情報の分析
C 提案書の作成
D 実行の援助
A 新たな状況の変化による定期的な見直し(メンテナンス)

4 ポートフォリオの組み方
(1)資産運用の3要素
@ 流動性(換金性)
A 安全性(確実性)
B 収益性(利殖性)
(2)分散投資によるリスクヘッジの必要性
(3)顧客ニーズの把握
(4)資金運用の目的の明確化
(5)資金運用の時期、金額の明確化
(6)短期(流動性・安全性)・中期(安全性・収益性)・長期(収益性+ハイリスク・ハイリターン)のバランスの取れた資金運用

5 資産保全プランニング
@ タックスプランニング
A 相続設計
B 事業承継設計

第2 ファイナンシャルプランナーの認定団体・資格の種類と試験等

ファイナンシャル・プランナー(アドバイザー)の認定団体や種類はいろいろあるが、現在一般的なものは、以下の2つである。

1 金財FP
 大蔵省所轄の財団法人金融財政事情研究会が実施する労働省認定の金融渉外技能審査の1〜3級に合格すると、ファイナンシャル・プランナーの称号が授与される。
 講習等の受講は義務付けられていないが、2級(2年以上、または3級合格後1年以上)・1級(5年以上または2級合格後1年以上)は、実務経験が必要である。
 金融機関系に強く、資格者もその職員が多い。中央信託銀行のように、この資格取得を義務化しているところもある。
 弁護士経験は、資産運用相談業務の経験として認められる。

2 AFP・CFP
 任意団体の日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が認定する資格である。
 同協会の認定するAFP養成研修受講者にAFP受験資格が与えられ、協会の正会員として入会すると(入会金1万円、年会費1万2000円)AFP資格とCFP受験資格が与えられる(CFP登録はAFP登録後1年の経過が必要。)。
 證券・保険・不動産等の会社関係者や主婦・学生等の一般人の受験が多い。
 講座は、通学だと20万円程度、通信で5万円程度からある。
 CFPには更新制度があり、AFPも更新制度が導入される予定。
 CFPは、日本で日本語で取得できる唯一の国際資格とされている。

第3 消費者被害救済担当弁護士とファイナンシャル・プランナー資格

1 何故ファイナンシャル・プランナー資格か?
 証券取引を勧める書籍や雑誌・新聞記事は多いが、証券取引について、投資家側(消費者側)の立場に立った教育やアドバイスが乏しく、業界主導で行われているところが大きな問題であり、証券取引をしようとしている人やしている人に対して、投資家側からの助言が必要である。
 被害救済に当たる弁護士は、被害実例や証券会社の手口を知り、商品リスクの仕組みを知りうる知識・経験を持っているので、何に投資したら儲かるかをアドバイスすることはなかなかできないだろうが、少なくともそのリスクを知らせ、リスクを考えた上で投資判断するようアドバイスすることは可能であろう。
 被害救済担当弁護士がファイナンシャルプランナーの勉強をすることには、投資問題等の基礎知識を整理し、身につけるというような意味がある。
 また、当然、事案やその問題点を理解し、一定の投資知識・経験のある被害者の信頼を得るなどの上で、被害救済のためにもその知識は役立ち得るし、適合性原則やポートフォリオ構成の妥当性等との関係では、専門家としての知見が直接役に立ちうる(金財1級やCFPなどの上位資格を取得すれば、鑑定や専門家意見書の作成も、可能になろう。)

2 2つの資格の比較と弁護士の資格取得
 この2つの資格は、内容的には大差ないとされている。
 AFPは金財の2〜3級に相当すると思われ、金財1級はCFPと同等かそれ以上と言われている。
 弁護士の場合には、@忙しくて講座を受講する時間をとるのが難しいA基本的知識や法律・税務知識は身につけている部分が多いB入会手続や入会金・会費の支払い・更新もないなどの理由から、金財の2〜3級(個人取引コース)の受験がお勧めであろう。変額保険等保険関係の被害救済を多く担当されている方の場合には、保険コースの受験も考えられよう(私は3級の個人と保険の両方を取得したが、内容的には、重複も多い。)。尚、金財1級は、極めてレベルが高いので、専門の通信教育等を受ける必要があろう。
 弁護士経験2年未満の方や修習生の場合には、AFP受験も検討に値するであろう。
 尚、いずれの資格であっても、ファイナンシャル・プランナー業務独自で採算を計ることは、著しく困難なことに留意されたい。